メダカの卵巣を精巣に換える世界で初めての成功に注目続く

アロマターゼ阻害剤(AI)を与えたところ精子を作る精巣が右下の位置に現れた。(写真提供=沖縄美ら島財団・総合研究センター中村將参与)

アロマターゼ阻害剤(AI)を与えたところ精子を作る精巣が右下の位置に現れた。(写真提供=沖縄美ら島財団・総合研究センター中村將参与)

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 沖縄美ら島財団・総合研究センター(沖縄県本部町)の中村將参与と愛媛大学南予水産研究センターの長濱嘉孝教授を中心とする研究グループは、魚の性転換に関する研究で卵巣を精巣に換えることに世界で初めて成功したことを発表したが、その後も注目が高まっている。

魚の性転換に関する研究に関する資料の一部(写真提供=沖縄美ら島財団・総合研究センター中村將参与)

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 英国Nature Groupのオープンアクセス科学誌「Scientific Reports」(10月7日号)に掲載された同研究。成熟したテラピアとメダカのメスに女性ホルモンの生成を抑える阻害剤を長期にわたり投与したところ、卵巣中にオスと同様に精子を作る精巣が現れ、精巣に置き換わることを確認している。

 さらに、メスからオスへ転換した精巣は、機能して子どもをつくる精子を産出することも確認。精巣中の精子は正常な運動性がありメスの卵と受精した。産まれてきた子どもは全てメスとなった。

 この結果から、少なくとも硬骨魚の卵巣中には卵にも精子にもなれる生殖幹細胞が一生存在すること、成熟卵巣の維持には女性ホルモンが不可欠であること、卵巣での女性ホルモンが著しく低下すると生殖幹細胞が精子形成へと進行することなどが分かった。

 これらの研究が今後も進めば、卵や卵巣を食用とする魚や、メスよりもオスの体が大きく利用価値のある魚などの養殖技術に応用できるほか、希少種の保存にも貢献できると期待されている。

 研究を推進した中村將さんは「脊椎動物の成熟した卵巣を精巣に換えること(性の可塑性)は不可能だと考えられてきたこれまでの常識を覆し可能であることが示された。今後、鳥などのより高等な生物における性の可塑性についても研究が進むことを期待したい」と話す。

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